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解雇が有効となる要件

解雇とは、使用者側から労働者に対して、将来に向かって一方的に労働契約を解消することをいいます。

これは使用者側からの言動がどうであったかによるものではなく、労働者の方が労働契約の解消に対して、明確に拒否する姿勢であるときには解雇と評価されます。

解雇が有効とされるためには、法令上次の要件を満たさなければなりません。使用者側にとっては非常にハードルの高いものとなっています。

1.客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であると認められること
  (労働契約法第16条)

「客観的に合理的な理由」とは、誰もが辞めさせられてもしかたがないと思えるような理由をいいます。具体的にはおおむね次のような事由とされています。

①労働者の身体、又は精神に疾病や障害などがあり、業務に堪えられないと認めら
  れるとき
②業務遂行能力がないと認められるとき(能力不足)
③出勤不良であると認められるとき
④協調性に欠け、他の従業員とうまく仕事をすることができないと認められるとき
⑤企業秩序維持義務違反が認められるとき
⑥業績不振などによる経営の悪化により、人員整理が必要であると認められるとき

「社会通念上の相当性」については、労働者の行った行為や状態と解雇処分とのバランスを指します。

例えば、労働者の行為が軽微であるにもかかわらず解雇を行った場合や、解雇処分を行う以前に使用者側の注意、指導、教育や管理面での配慮が欠如していた場合などは、社会通念上相当とはいえないことになります。

(リオ・ティント・ジンク(ジャパン)社事件 S58.12.14)
解雇は、労働者にとって生活の基盤を覆滅させるものであるから、勤務成績や能率が不良として解雇する場合には、使用者においてその是正のための努力をし、それにもかかわらず、なおその職場から排除しなければ適正な経営秩序が保たれない場合に初めて解雇が許されると解されるのが相当である。

客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当といえない場合の解雇は、権利を濫用したものとして無効となります。(解雇権濫用の法理)

2.就業規則や労働協約に定めてある解雇事由に従って解雇していること
ただし、就業規則や労働協約に定められている解雇事由に該当する場合であっても、それによって当然に解雇できるわけではなく、解雇が権利の濫用にならないかどうかが問題となります。

就業規則については、常時10人以上の労働者を使用する事業場において作成・届出を義務づけられているもので(労基法第89条)、解雇にかかわる事由は絶対的必要記載事項として必ず記載しておかなければなりません。

労働協約とは、会社に労働組合が組織されている場合などに、労使間で合意した事項について文書にし、双方が署名(又は記名押印)したものです。

icon 例示列挙説と限定列挙説
就業規則に定めた解雇事由については、それが例示として列挙したものか、それともその事由に限定されるとして列挙したものかが問題となります。

判例の多くは後者の限定列挙説を採りますが、実務的には解雇事由の中に「その他前各号に準ずる」と定めることで例示列挙説と限定列挙説との差をなくすることができるとされます。

ただし、懲戒解雇事由については限定列挙とされていますので、定めた懲戒解雇事由以外での解雇はむずかしいと考えておくべきです。

なお、就業規則の作成義務があるにもかかわらず作成していない場合や、作成しても労働者に周知していない場合などは、使用者側にはかなり不利となります。

3.法令で定められている解雇禁止事由に該当しないこと
法令で定められている次の期間、又は次の事由を理由とする解雇は、上記の労働契約法第16条(解雇)によるまでもなく無効となります。

①業務上の負傷・疾病による休業期間とその後の30日間、産前産後の休業期間と
 その後の30日間(労基法19条)
②労基法、安衛法違反事実の行政官庁等への申告を理由とする解雇
 (労基法104条2項、安衛法97条2項)
③国籍、性別、信条、社会的身分を理由とする差別解雇(労基法3条)
④労使協定の過半数代表者になること、なろうとしたこと、また過半数代表者とし
 て正当な活動をしたことを理由とする解雇(労規則6条の2、3項)
⑤企画型裁量労働制の不同意を理由とする解雇、企画型裁量労働制の労使委員会の
 労働者委員になること、なろうとしたこと、また労働者委員として正当な活動を
 したことを理由とする解雇(労基法38条の4、1項6号、労規則24条の2の
 4、6項)
⑥不当労働行為となる解雇(労組法7条)
⑦女性労働者が婚姻したことを理由とする解雇(均等法9条2項)
⑧妊娠、出産、産前産後休業の取得・請求、妊娠・出産に起因する能率の低下・労
 働不能を理由とする解雇(妊娠中及び出産後1年)(均等法9条3項、4項)
⑨育児・介護休業の申出、取得を理由とする解雇(育児・介護休業法10条、16
 条)
⑩労働者派遣の一般派遣業務の派遣可能期間決定の際の意見聴取等の労働者の過半
 数代表になること、なろうとしたこと、また過半数代表として正当な活動をした
 ことを理由とする解雇(派遣法規則33条の4、3項)
⑪個別労働紛争解決促進法に基づき労働局長に対して助言・指導を求めたこと、紛
 争調整委員会にあっせんを申請したことを理由とする解雇(同法4条3項、5条
 2項)
⑫公益通報をしたことを理由とする解雇(公益通報者保護法3条)
⑬裁判員の職務を行うために休暇を取得したこと等を理由とする解雇
(裁判員法100条)

4.30日以上前に解雇の予告を行うか、予告に代わる解雇予告手当を支払う
 こと

手続きの面で解雇を有効に行うためには、少なくとも解雇しようとする日の30日以上前に解雇の予告を行うか、それに代わる解雇予告手当として30日分以上の平均賃金を支払わなければなりません。

なお予告の日数は、1日について平均賃金を支払つた場合においては、その日数を短縮することができます。

例えば解雇しようとする日の20日前に予告を行うのであれば、10日分の解雇予告手当の支払いが必要となりますし、解雇しようとする日の10日前の予告であれば、20日分の解雇予告手当の支払いが必要となります。

解雇予告手当となる平均賃金とは、算定すべき事由が発生した日以前3か月間に支払われた賃金をその期間の総日数で除した金額をいいます。(労基法第12条)

icon 解雇予告の例外
次の場合は、解雇の予告を行うことなく即時に解雇することができます。(労基法第20条)

①天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合で、
 所轄労働基準監督署の認定を受けた場合

天災事変とは、大地震や大火災などを指し、経営上の不振や資金繰りの悪化などはその他やむを得ない事由には含まれませんので、極めて限定的な事由に限られることになります。

②労働者の責めに帰すべき事由に基づいて解雇する場合で、所轄労働基準監督署の
 認定を受けた場合

③次の労働者を解雇する場合(労基法第21条)
(イ)日々雇い入れられる者
(ロ)2か月以内の期間を定めて使用される者
(ハ)季節的業務に4か月以内の期間を定めて使用される者
(ニ)試みの試用期間中の者

これらのケースはもともと使用期間が短いということで解雇予告が除外されているものです。

ただし、(イ)については1か月、(ロ) (ハ)については所定の期間、(ニ)については14日をそれぞれ超えて引き続き使用されるに至った場合は、解雇の予告又は解雇予告手当の支払いが必要となります。




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