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希望退職の募集と退職勧奨

希望退職の募集は、会社が経営難に陥ったときなどに、経営の合理化や採算性の回復などを目的に、従業員に対して通常の退職時よりも優遇措置を用意して、一定期間自発的に退職を促す措置です。

希望退職の募集は、整理解雇の前段で行われることが多く、整理解雇の四要件(又は四要素)の「解雇回避努力義務」を示す措置のひとつとされています。

また、退職勧奨は、従業員に対して個別に退職を勧めて自主的な退職を促すもので、希望退職の募集と平行して行われたり、また募集の結果、当初の目標人数に達しなかったときなどに行われるものです。

このように、希望退職の募集や退職勧奨は、従業員の退職の意思表示や申込みを誘引する措置や行為であって、強要するものではありません。

一般的に、希望退職の募集にあたっては、①募集期間、②募集人数、③募集対象者、④退職条件などが、従業員に対して提示(説明)されることになりますが、条件や方法、実施については使用者側が自由に決めることができます。

①募集期間
募集期間は、長すぎず短すぎず、だいたい1週間から2週間前後が適当とされています。

長い場合は、従業員の不安を増幅させたり、社内の秩序が乱れる原因となる場合があります。

反対に短かすぎると、すぐには決断できない従業員も多く、思うように人数が集まらないということにもなります。

②募集人数
なぜその人数の退職者が必要なのか、従業員側に対してきちんと説明できるような根拠を示せることが必要です。

③募集対象者
全員を対象とするのか、特定の部門に限って行うのか、また特定の職種、一定の年齢を基準とするのかなどです。

一部の従業員を対象とすることについては、不公平であるとのクレームが出る場合がありますが、退職するかどうかは、あくまでも従業員の自由意思に任されており、会社が強制するわけではないので、それのみで問題となることはありません。

ただし、女性だけとか、男性に限って行うというようなやり方の場合は、男女雇用機会均等法に抵触する可能性が大きいので注意が必要です。

④退職条件
条件は、規定の退職金に加えて一定額を上積みするなどの割増支給を行うことが一般的ですが、他に年次有給休暇の買上げや特別休暇の付与、関連会社などへの再就職のあっせんや、再就職支援会社との提携などが考えられます。

希望退職の募集を行った結果、目標の人数をほぼ確保できればよいのですが、予定人数を上回ってしまった場合は、時として「逆肩たたき」といわれるような退職の慰留を個別に行わなければならないような場合もあります。

また、予定人数を下回った場合は、そこで打ち切るのか、又退職勧奨の実施と共に二次、三次と続けて募集を行うのがよいのかなどさらに検討が必要となります。

退職勧奨については、使用者から従業員に対して強制を伴わない退職の働きかけを行うことで、簡単にいうと「肩たたき」です。

また、退職勧奨は、希望退職の募集とは全く関係がない場合でも、例えば問題のある従業員などに対して、個別に任意で行われるケースもあります。

従業員が、これに応じると労働契約上の合意解約となり、解雇にはあたりません。通常、退職勧奨を行うときは、賃金の何か月分かを補償したり、規定の退職金に加えて一定額を上積みするなど従業員が勧奨に応じやすいような条件を提示して行うのが一般的です。

退職勧奨を行うこと自体は、法律に違反する行為ではありませんが、勧奨に応じるかどうかは全く従業員の自由なので、使用者側は、この点を十分考慮して行わなければなりません。

退職勧奨を受け入れない従業員に対して、執拗な勧奨を繰り返し行うことや、労働条件の切り下げ、配置転換などを示唆して退職に追い込むようなことは、勧奨の域を超えた一種の(退職の)強要となり、それ自体が違法な行為となります。

その結果、会社側に損害賠償責任が生じてくることも考えられますので、十分な配慮が必要です。

民法(不法行為による損害賠償)
第709条  故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。




従業員側も、勧奨である以上、それは合意解約の申込みあるいは誘引にすぎないということを念頭にいれ、退職の意思がない場合ははっきりと断ることが必要です。

また会社側の退職勧奨に対して、同意と取れるような言動を行ったり、合意文書に署名を行ったりすると後から撤回することが難しくなりますので、判断が難しい場合は、その場での回答を一旦保留し、熟慮してから後日回答するようにすることが必要でしょう。

退職勧奨が執拗に行われそうな場合は、IC(ボイス)レコーダーなどを活用し、相手の言動を録音しておくことも一つの対策です。

執拗さや強要の程度を証明できる重要な証拠となりますので、活用次第では威力を発揮します。

なお、退職勧奨が違法とされた代表的な判例には次のようなものがあります。

(下関商業高校事件 S55.7.10)
Aの行った退職勧奨は、多数回かつ長期にわたる執拗なものであり、退職の勧めとして許される限界を超えている。

この事件の退職勧奨は、従来の取扱いと異なり、年度を超えて行われ、またXらが退職するまで続けると述べられており、勧奨が際限なく続くのではないかとの心理的圧迫をXらに加えられたものであって許されない。

Xらが、退職勧奨に応じないならば、組合の要求に応じないと述べたり、提出物を要求したり、配転をほのめかしたりしたことを考えると、Xらは退職勧奨によりその精神的自由を侵害され、また、耐えうる限度を超えて名誉感情を傷つけられ、さらには家庭生活を乱されるなど、相当な精神的苦痛を受けたと容易に考えられる。

よって、この事件における退職の勧めは違法であり、Yは、Xらが被った損害賠償の責任を負う。




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