HOME > 能力不足による解雇

能力不足による解雇

職場で就業するにあたって、その労働条件やルールを定めた就業規則の中の解雇事由の一つとして、能力不足による解雇があります。

具体的には、「業務遂行能力が著しく劣るときは解雇する」といった内容のものですが、このような能力不足を理由とする解雇が現実に可能なのでしょうか?

この点、代表的な判例では、現実に解雇しなければならないほどに仕事ができなかったのか、その能力の程度が第一に問われるとしながら、単に労働者の能力が全体の中で相対的に低いというだけでは不十分であり、著しく労働能力が劣り、しかも向上の見込みがないときでなければならないとしています。

また使用者側も能力不足だからといっていきなり労働者を解雇するのではなく、教育訓練や配置転換を行うなど、当該労働者の雇用の維持に向けての努力が求められなければならないとしています。

ただし、このような能力不足に対する考え方は、新卒で一括して大量採用されたような社員については、あてはまるといえます。

というのは、新卒で一括大量採用された社員の場合は、学校や成績等から能力を推定して採用を決めているだけで、必ずしも具体的な業務遂行能力が労働契約の内容となっているわけではありません。

必要な業務遂行能力は、入社後の社員教育やOJT、人事異動などを通してキャリアアップされていくわけですから、このような社員に対して、現実に能力不足を理由として解雇することはよほどのことがない限り難しいと考えられます。




ただし、次のような社員については、新卒で一括大量採用されたような社員と比べると、能力不足を理由とする解雇が比較的肯定されやすいとされています。

①地位を特定して中途採用された者
地位を特定して中途採用された者とは、例えば大企業などにおいて役職を経験した人で、その能力を買われ、中小企業などに○○部長などの地位を特定して採用されたような人を指します。

こういった人については、業務遂行能力の高さやその適性が労働契約上の重要なポイントとなっていると考えられるため、当初期待したとおりの成果が上げられなかった場合には、能力不足を理由に配置転換等の雇用維持のための手段を講じることなく、労働契約を解消(つまり解雇)することができると考えられます。

ただし、能力不足かどうかの判断に当たっては、仕事の環境が通常どおりの環境であったのか、また本人の努力の度合いや姿勢がどうであったのかなども検討されなければならないと考えられます。

企業が地位特定者として採用する場合は、他の一般社員とは違った高い能力を期待して採用するわけですから、その地位や職務内容、仕事の成果としての具体的な内容、達成してほしい目標数値等を盛り込んだ労働契約書を個別に取り交わすことが重要となります。

また採用に当たっては、その地位や職務内容を反映した賃金(報酬)で処遇することも重要なポイントとなってきます。

②専門職として中途採用された者
専門職として中途採用された者とは、例えば大企業の技術部門などで勤務していた専門的な技術や知識、能力などを持っている人を、専門職としてスカウトされたような場合です。

やはり、その専門的な技術や知識、能力などの高さが労働契約上の重要なポイントとなっていると考えられるため、当初期待したとおりの専門的な技術や知識、能力がないと判断された場合には、労働契約を解消することができると考えられます。

ただし、雇用維持の観点から、他の職種に配置転換を勧めるなどの配慮は必要であると考えられます。





ページトップに戻る