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自己都合退職の申し出

自己都合により会社を退職しようとする場合は、退職願(届)を提出するなど、退職の意思を何日前までに会社に伝えればよいのでしょうか?

それについては、労働基準法には特に規定はありませんので、民法やその会社の就業規則等の規定によることになります。

そもそも労働契約には、「期間の定めのある契約」と「期間の定めのない契約」に分かれます。

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「期間の定めのある契約」とは、パートタイマーや契約社員など非正規雇用の従業員に多く見られる契約形態で、契約期間が1年や3年など予め定められているものです。

「期間の定めのある契約」は、使用者との間で予め契約期間を約束してあることなので、契約途中における解約は、やむを得ない事情がない限り原則としてできません。(民法第628条)

それに対して正社員などは、「期間の定めのない契約」であることがほとんどで、民法の規定によれば、いつでも解約(退職)の申し出を行うことができます。

なお、定年制については、その途中での退職や解雇が禁止されているわけではないので、契約期間を定めたことにはならないということになっています。

民法(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)
第627条  当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

2  期間によって報酬を定めた場合には、解約の申入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない。



つまり、民法第627条の規定に従えば、自己都合退職の場合に、会社に退職の申し出をして2週間が経過すれば、会社側がこれを拒否したとしても退職が自動的に有効に成立するということになります。

ただし、月給制の場合においては、賃金の支払い計算期間の前半に申し出た場合は、その期間が満了するまで、後半に申し出た場合は次の支払い計算期間の満了まではできないということになります。

労働基準法では、賃金は毎月1回以上支払わなければならないことになっているので、労働者側からの退職の申し出は、法的には2週間から遅くとも45日程度経過すると有効に成立することになると考えられます。

ところが、会社によっては自己都合退職の場合には、就業規則等で退職願(届)は退職する日の1か月前までに提出しなければならないというように定めてある場合が多く見受けられますが、そのような場合に民法の規定とどのように整合性をはかればよいのでしょうか?

結論的には、賃金の支払い計算期間の前半に申し出た場合は民法の規定が優先し(つまりその計算期間の満了をもって退職となる)、後半に申し出た場合は就業規則が優先する(つまり1か月後をもって退職となる)と考えるのが妥当とされています。

他方、会社側からの一方的な労働契約の解約である解雇については、民法ではなく特別法である労働基準法や労働契約法に規定されているので、それらによることになります。

icon 一般法と特別法
法律には、一般法と特別法という区分の仕方があります。一般法とは民法などのように一般の人に適用される法律のことで、特別法とは商法などのように特別な立場の人や事柄について適用される法律のことです。

一般法と特別法に同じことが規定されている場合は、特別法が優先されることになっているので、解雇等については特別法である労働基準法や労働契約法が優先して適用されることになります。

icon 辞職と合意退職
辞職とは、従業員側の一方的な意思表示によって労働契約が終了することを意味し、合意退職とは、労働契約終了の申し込みとその承諾を意味します。

一般的に、「退職届」と書けば届なので辞職の意味合いが強そうですし、「退職願い」と書けば退職の申し込みとその承諾を意味しそうです。

ただし、従業員側からすれば、必ずしも「辞職」なのか「退職の申し込み」なのかを明確に意識して書いているわけではないのが大半でしょう。

判例上も、基本的には日本の場合は従来から円満退職を基本としてきたことなどから、その形式に関らず、契約終了の申し込みであるとする見解が一般的となっています。

ただし、本人が「慰留されても、絶対に会社を辞めます。」というように特別の意思表示をしている場合などは「辞職」と捉えることになるいえます。

icon 退職願(届)は撤回できるか?
自己都合の場合の退職願(届)は、上述のとおり合意解約の申し入れとする見解が一般的ですが、撤回ができるのは、使用者が承諾の意思表示をする(=正式に受理される)までであって、それ以降はできないとされています。(ただし、いったん受理されてしまっても、早い段階の撤回なら、使用者が考えを改めるということはあり得ることです。)

なお、退職の意思表示が、「心裡留保」や「錯誤」に当たる場合は無効となり、「強迫」に当たる場合は取消すことができます。

「心裡留保」とは、労働者が本気で退職願(届)を提出したわけではなく、使用者もそれを知っていた場合をいいます。

「錯誤」とは、退職する必要がないのに、思い違いをして退職願(届)を出してしまった場合です。

「強迫」ですが、例えば暴力を受ける、何回も呼び出されては複数人に取り囲まれるなど、度を超した退職勧告を受けた場合などは、そうした行為自体が不法行為であり、損害賠償を請求することができます。

基本的に、従業員は会社の退職の勧めには応じる義務は一切ありませんので、この点は押さえておくことが必要です。



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