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退職金の支払い/減額・不支給

退職金制度は今日多くの企業で導入されていますが、制度を設けるかどうかは法律による規制はなく、個々の企業の自由となっています。

退職金制度を設ける場合には、通常、就業規則や労働協約において規定化されるのが一般的ですが、就業規則や労働協約に定められていない場合には、例えばある従業員に退職金を支払ったとしても、それが恩恵的な性質のものであれば、直ちに他の従業員にも支払わなければならないような法律上の義務が発生するわけではありません。

ただし、支払いが規定化されていなくても、それが事実たる慣習となっている場合には、民事上の支払い義務が発生するものと考えられています。

就業規則等に定める場合には、①適用される労働者の範囲、②退職手当の決定、計算及び支払いの方法、③支払いの時期について必ず記載しなければならないこととされています。(労基法第89条)

①適用される労働者の範囲
会社に正社員、パートタイマー、契約社員などがいる場合には、パートタイマーや契約社員は支給の対象外となっている場合があります。就業規則や労働契約書で確認するか、入社時に確認しておくことが必要です。

なお、パートタイム労働法では、パートタイマーの雇い入れの際には、退職手当の有無について、あらかじめ文書の交付等によって明示しなければならないことになっています。(パートタイム労働法第6条)

②退職手当の決定、計算及び支払いの方法
支給対象とされていても、勤続○か月以上あるいは勤続○年以上が支給要件となっている場合があります。

また長期に勤続すれば、有利に計算される方式が取られていたり、自己都合退職と会社都合退職では会社都合退職の方が金額が高いなど、一定の差異がある場合が多くあります。

③退職手当の支払いの時期
労基法第23条では、「使用者は、労働者の死亡又は退職の場合において、権利者の請求があった場合においては、7日以内に賃金を支払わなければならない」旨規定されていますが、退職金の支払いに関しては、この規定は適用されないものと解されています。

従って、例えば「退職金は退職日より2か月以内に支払う」というような定めをしてもよいことになっています。

icon 退職金の減額・不支給
退職金の支給に際して、一定の事由がある場合に減額や不支給とする場合には、あらかじめその事由や要件等について就業規則(退職金規程)等に定めておかなければなりません。そうでなければ、減額や不支給とすることはできません。

また、減額や不支給となる事由については、懲戒解雇に処せられた場合や、退職後の競業避止義務に違反した場合など、その内容が合理的なものである場合に限って有効とされます。

なお、全額不支給とするためには、過去の判例から労働の代償を失わせることが相当であるとされるような顕著な背信性がある場合に限られるとされています。

icon 仕事でミスがあった場合に、その損害額を退職金から控除することができるか?
退職金は、就業規則(退職金規程)等で支払条件等について定めた場合には、後払いの賃金とみなされ、労基法第24条の賃金の全額払いが適用されるため、控除は原則としてできません。

ただし、労働者本人が控除されることを了承した場合は可能ですが、そもそも仕事上のミスが損害賠償の請求の対象になるかどうかが問題です。

一般的に、労働者に対して損害賠償が発生するのは、労働者に故意又は重大な過失があった場合であって、通常の注意義務を尽くしていれば、働く過程において日常的に発生するような損害については、損害賠償の義務は発生しないものとされています。

労働者側の過失の度合いが重ければ負担することにもなりますが、その場合でも使用者側の教育や管理体制などの事情が考慮され、労働者が負担する額が制限される傾向にあります。

では入社時などに「ミスをしたら会社に対して○○万円支払う」などといった契約を会社側と結んでいた場合はどうでしょうか?

労基法第16条では、事前にこのような損害賠償額を決めたり、その額を予定する契約を結ぶことを禁止していますので、このような契約自体が無効となります。

icon 退職金が譲渡された場合
金融機関から退職金を担保にして融資を受けた労働者が、返済の途中で退職した場合に、労働者が退職金債権をその金融機関に譲渡するという内容の契約を結ぶケースが考えられますが、そのような場合に、会社は退職金債権を譲り受けた金融機関に退職金を直接支払って差し支えないかという問題が出てくることがあります。

このような問題については、退職金は後払いの賃金であるとする考え方から労基法第24条の賃金の直接払いが適用され、会社は金融機関に直接支払うことは許されず、労働者の方に支払わなければなりません。

なお、退職金の譲渡を禁止するような規定はないことから、譲渡自体は認められるものです。




icon 労働者が死亡した場合
就業規則(退職金規程)等に、労働者が死亡した場合に、誰に支払うか支給対象者の順位等が定められている場合はそれに従うこととなりますが、定めがない場合には、民法の定めに従って相続人に支払うことになります。

この場合、相続人が複数の場合は、分割して支払うことになりますし、当事者間で争いが生じた場合などは、争いが終わるまで会社が保管することになります。

icon 労働者が行方不明となった場合
労働者が突然行方不明となった場合など、会社は本人と連絡が取れなくなるためその対応に苦慮することになりますが、結果的に労働者の所在がどうしてもわからない場合は、会社が解雇する意思を官報等に掲載する公示の方法などを取ることになります。

退職金は、通常、本人の同意を得て金融機関の口座へ振り込みますが、行方不明の場合は、本人の同意を得ることができませんので、本人名義の口座に振り込むことはできません。

また、退職金は後払いの賃金であるということから、本人の意思を受けた配偶者などの使者に支払うことも考えられますが、本人が行方不明のため使者としての確認がとれないこととなり、この方法によることもできません。

そこで、本人が行方不明となったときは、退職金を法務局の供託所に供託する方法をとります。この処置によって会社は本人に退職金を支払ったとみなされることになります。

なお、後日、本人が現れれば、供託所から退職金を受領することができますが、生活費などのため配偶者等の親族が受領するためには、民法の「不在者の財産管理人制度」を利用することにより可能となります。

「不在者の財産管理人制度」とは、従来の住所又は居所から行方不明となり、その不在者に財産管理人がいない場合に、配偶者などの利害関係人が家庭裁判所に申立てることにより、財産の管理人の選任等を行ってもらい、不在者の財産を管理できるようにする制度です。




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